危険ナ香リ


 抵抗すればいいのか抵抗しなきゃいいのか、全然分かんないよ。


 ……どうしていいか、全然分かんないよ。




「せんせ……」

「……あーもう。やっぱり帰す」

「え。や、やだっ」

「お前バカだな」




 少し体を離した佐久間先生の服をさらにきつく掴んでやると、先生は眉を寄せた。


 どうしていいか分かんないけど……とりあえず、離れたくはない。


 抵抗しろと言われても、するなと言われても、どちらにしても離れたくはない。




「バカって……」

「もう夜だぞ。分かってるのか。ここ俺の家だぞ」

「え?え?」

「……分かれよ」




 盛大にため息をはかれても、あたしはさっぱり意味が分からない。


 夜なのは分かる。

 ここがどこかも分かる。


 ……だからなんだ、と言ってやりたいぐらいだ。




「舐めるだけですむと思うのか?」

「え?」

「言っておくけどな、安心してるなよ」

「え?」

「……ベッドの中に連れて行けば危機感持ってくれる?」

「え!?」




 べ、べべべ、ベッ……!?


 な、なにする気ですか、佐久間先生!


 顔を真っ赤に染め上げながら固まるあたしを、佐久間先生は簡単に抱き上げた。


 担がれるように抱き上げられて、ビックリして声を出すことも忘れるあたしは、ただ固まるしかなかった。




 ドアが開いた音がした。


 中に入ると、そこは初めて見る部屋で……タバコのニオイがして、ようやく、ここが佐久間先生の部屋なんだと理解した。


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