危険ナ香リ
「……は?」
ぽかんと口を開けて驚いている佐久間先生を前にして、あたしは顔を赤くする。
は、恥ずかしい。あたし恥ずかしいよっ。
言ってから後悔するなんて、だめだめだ、あたし。
「お前分かってる?キスってどんなのか分かってる?」
「……っ、いちおう」
「分かってて言ってるわけ?」
追求しないで欲しい。
顔を真っ赤に染め上げたあたしは、うつむいて、少しでも赤い顔を見られないように努力した。
そんな努力は、佐久間先生が顎を手で掴んで上を向かせたことで消え去ってしまった。
「……っ」
逃げ出してしまいたいと思った。
だけど逃げられなかった。
……タバコのニオイがあたしの動きを制するかのようだった。
「……後悔するなよ」
そっと言われたその言葉を聞いて、佐久間先生としっかり合っていた目をゆっくり閉じた。
緊張がおさまらなくて、顎を掴んでいる佐久間先生の腕を両手で掴んだ。
―――― 逃げ出してしまいたいと思った。
だけど逃げる気になれなかったのは、
「……っ」
―――― 嫌だ、と思わなかったから。
危機感を持てと言われたけれど、あたしの中身は危機感よりも緊張感の方が強かった。
……微かに唇が触れ合った感触を感じて、ゆっくり、佐久間先生の腕から手を離した。
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