危険ナ香リ




「……じゃあどんな顔すればいいんだよ」




 囁くような小さな声がすぐ側から聞こえてくる。


 それと同時に、あたしの体にも佐久間先生の腕が回った。


 不思議なぐらいに、佐久間先生の温もりがあたしに染み込んでくる。


 ……あたしの温もりもこんな風に伝わればいいな、なんてチラリと思った。




「どんな顔、って」

「“そんな顔”じゃなきゃなんでもいいのか?」




 そうゆうわけじゃないけど……。


 どんな顔をして欲しいかなんて、考えることをしなかったから、つい考え込んでしまう。


 ……でも、直感で言うんなら、もう答えはでてる。






「……笑ってください」






 どうせなら笑顔がみたい。


 あんなつらそうな顔よりも、笑った顔の方が断然いい。




―――― だから、ねぇ、笑ってよ。




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