危険ナ香リ


 それだけ恥ずかしさで満たされるあたしだったけれど、不思議と後悔はしていなかった。


 それはなぜなんだろう。


 ……今はそんなことを考える余裕もなく、ただただ恥ずかしがっていた。




「柚乃。そこ邪魔。退け」

「……でたな、バカ飛鳥」

「バカとはなんだてめぇ」




 ああ、どうしようどうしようっ。


 普通に学校生活送ってたら、養護教諭なんてそうそう会うことなんてないよね。


 で、でももし会っちゃったらどうしよう。


 まずは挨拶?

 いやでも最初は“昨日のことは忘れてください”って言うべき?

 いやそれとも、昨日のことには触れないべき!?




「今ここあたし使ってんの。あんたはあっち行ってよ」

「アホ。あっちったって、あいつのあの重々しい空気の中にどうやって突っ込めってんだよ」

「……とりあえず政権について語り合え」

「俺がそんなの語れると思ってんのか?」




 どうしよう、なんて疑問ばかりがぐるぐる頭の中に渦を巻いてあたしを悩ませる。


 そんなあたしの目の前で、飛鳥くんと柚乃ちゃんがどんな話をしているのか、知ることはない。


 てゆうか聞いてない。


 てゆうか2人の存在にすら気づいていない。


 頭の中は、佐久間先生のことばかりだった。


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