危険ナ香リ


 こんな状態なものだから、授業中も終始ぼんやりしていた。


 幸い、今日は一度も当てられず、しかも日直でもなんでもないし体育もないおかげで、あたしはずっと椅子に座っていた。




 こんなあたしがようやく現実に戻ったのは、昼休みのことだった。




「恭子ちゃん?恭子ちゃーんっ」

「もうずっとこうなんですよ。助けてください美波先輩っ」

「うむ。助けると言ってもな。……やっぱ昨日なんかあったな」

「やっぱりそう思います?祐となにがあったんでしょうねぇ」

「いや、そっちじゃないわよ。きっと」

「へ?」




 お腹が減ったかどうか考える余裕すらなく、ひたすら思考の世界に入り浸るあたし。


 たまに肩を揺さぶられても、動こうとは思えなかった。




「恭子ちゃん」

「……」

「敦と、なんかあった?」

「え゛!?」




 さ、佐久間先生!?


 慌てて美波先輩の顔を見るあたしは、ようやく思考の世界からさよならをした。


 そして佐久間先生の名前に、顔を真っ赤にしながら、現実の世界に帰ってきた。


 こんな分かりやすいあたしを見て、美波先輩は目をキラリと光らせていた。




「その反応は当たりね。当たりなのね」

「え!?あ、う、え」

「まさか手足縛られて服脱がされているところにあの汚らしい手が這いずり回って……」

「違いますっ!絶対違います!」

「あのあのっ!なになに!?あたしだけ理解できてませんっ」




 佐久間先生はそんなことしてなくて、したといえばキスぐらいで。

 うわああっ!ヤバい思い出した!恥ずかしいっ!


 とにかく、頭の中で色々なことを忙しく考えるあたしだった。


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