危険ナ香リ




「……つまりは恭子ちゃんは大人の階段を登ったのよ……」




 柚乃ちゃんへの説明をしているらしい美波先輩は、遠い目をしながら呟くようにそう言った。


 違っ、違うって言ったのに!




「えー!?まじっすか!?グッバイ処女!?」

「ち、違うのっ。違うの柚乃ちゃんっ」

「グッバイ処女。さよなら無垢な恭子ちゃん……。こんにちは、大人の恭子ちゃん」




 イジメだ!!

 これイジメだ!!


 顔を真っ赤にして、泣き出しそうになりながら、2人を見つめる。


 すると美波先輩はあたしを見て、クスッと笑う。




「ごめんね、意地悪して。やっぱ恭子ちゃんは無垢なままだわ」




 や、やっぱりイジメだったっ。


 ムッと唇を尖らせてうつむくと、美波先輩がさらに笑う。




「冗談なんですか?」

「ええ。そんなことしてたら、あたしの部屋まで喘ぎ声が聞こえてるわよ」




 ……ふ、ふしだらだ。


 美波先輩、ふっ、ふしだらな人だ。




「……あの、美波先輩」

「ん?」

「話聞いててなんとなく思ったんですけど……恭子、昨日美波先輩の家に行ったんですか?」

「ええ」

「で、佐久間先生となにかあったから、あんな風にボーっとしてたってわけですか?」

「ん。きっとね」




 美波先輩がそう言ったところで、2人の視線が一気にあたしに集まった。


 思わず慌ててしまうのは仕方がないことだと言い訳してもいいはずだ。


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