危険ナ香リ




「なにがあったの?」




 そう聞いてきたのは、柚乃ちゃんだった。


 あたしは答えられそうになくて、目を泳がせる。


 だってだって、キスしただなんて言えそうにないもん!


 ……ああ、またキスのこと思い出した……。




「もし犯されたんなら言ってね。あたし、全力で警察呼ぶから」




 ……全力で警察呼ぶって、どうゆう呼び方だろ。


 って、それより、あたし犯されたわけじゃないんだけよって言わなきゃ。




「あ、あの」

「それとも、佐久間先生のこと好きになっちゃった?それならあたしに言ってよ。全力で応援するからっ」




 ……たぶんここは、喜ぶべき場面なんだと思う。


 友達に恋の応援をされるなんて、とても幸せなことなんだと思う。




 だけどあたしは喜べなかった。




「……柚乃ちゃんも、好きな人いたら、あたしに言ってよ」




 自分だけ隠すなんて、許せない。


 あたしの話だけ聞き出すなんて、許せない。


 ……この想いは、昨日、祐に向かって感じた想いと似ている気がする。


 “1人で楽にならないで”


 あたしだけ悩ませて、自分だけ笑っているなんて、許さない。


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