危険ナ香リ




「え?なにいきなり」




 一瞬、戸惑ったように瞳を揺らせた柚乃ちゃんを見た。


 それがすぐ笑顔に変わっていくのも見た。


 美波先輩は、黙ってあたしを見つめていた。




「それよりお腹減っちゃった。早くご飯食べにいこ?」




―――― はぐらかされた。




 悲しかった。

 思わず泣きそうになった。

 ……ちょっとだけムカついた。


 佐久間先生は、あたしは柚乃ちゃんに嫌われていないって言ったけど、やっぱり、嫌われてるんじゃないかって心配になる。


 だってあたしにだけ言ってくれないんだもん。


 否が応でも、そんな風に考えてしまう自分が恨めしい。




「……そだね。お腹減っちゃったね」




 柚乃ちゃんは、あたしのことをどう思っているんだろう。


 あからさまに弱っているあたしを、柚乃ちゃんが不思議そうに見つめてくる。


 美波先輩はあたしから柚乃ちゃんへと視線を移し替えて、ため息をはいた。




「柚乃」

「はい?」

「ごめんね。今日、あたし恭子ちゃんと2人で話すことができちゃったからさ、他の人とご飯食べてて」




 美波先輩はなにを言い出しすのかと思い少しビックリしていると、無防備だったあたしの腕が掴まれた。




「もしくは保健室に行って敦とご飯食べて」




 まだお弁当をカバンから出してもいないのに、立ち上がるように指示されて、それから引っ張られた。


 あたしを連れて教室から出て行く美波先輩に逆らうことはせずに、振り向いた。


 ……柚乃ちゃんが困ったような顔をしていた。


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