危険ナ香リ
「柚乃に嫌われてるって思うよりなら、よく考えて、柚乃の気持ちを当ててみなさい」
……無理だ。
即答できる。それは無理だ。
だってあたしは、人の気持ちを理解する能力が欠けているんだもん。
無理だよ。無理に決まってる。
「大丈夫よ。“好きな人には好きな人がいる”ってゆう片想いのツラさを知ってる恭子ちゃんなら、きっと分かるはずだから」
微笑む美波先輩の前で、あたしは戸惑いを隠せずに視線を泳がせるだけだった。
「まあ、そんなこと考えるよりなら、2人っきりになって根ほり葉ほり聞いてる方が早いんだけどね」
小さく笑う声が聞こえて、あたしはホッとした。
やっぱり考えなくてもいいんだよね。
そう思うあたしに、美波先輩は“ご飯食べよう”と促した。
お弁当を持ってきていないあたしは、美波先輩のご好意によりお弁当を半分こにしてもらった。
とは言っても、あれも食べろこれも食べろと色々差し出してくるものだから、あたしは美波先輩のお箸を借りていっぱい食べてしまっていた。
「そういや、祐の方はどうなった?」
素手でウインナーを掴んで口へ運ぶ美波先輩を見て、あたしは手を止めた。
ついでに少しの間黙ると、美波先輩が不思議そうな顔をしてあたしを見ていた。
「……あの、あたし」
「ん?」
「まだ、祐と話すらしてないんです……」
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