危険ナ香リ


 ってゆうか、それどころじゃなかったって言った方が正しいかもしれない。


 昨日、佐久間先生と会ってから、もうずっと、頭の中は佐久間先生のことばっかりだったから。


 言い訳がましく聞こえちゃうけど、本当にそうなんだから、仕方ないよね。


 なんて自分自身に満足させるみたいにそう思っていると。




「だろうと思った」




 そんな言葉が返ってきたことに驚いた。


 美波先輩は小さく笑って、それから卵焼きを取り出す。




「失礼なこと言っちゃうかもしれないけど……。恭子ちゃんって、嫌なこと後延ばしにしていくタイプでしょ?」




 パクリと美波先輩の口の中に消えた卵焼きから目を逸らし、下を向いた。




「それに、昨日“大嫌い”なんて言った相手に自分から進んで話しかけにいくなんてマネできなさそう」

「……」

「ごめんね、酷いこと言ってるね。……でも、今までの恭子ちゃん見てたらそんな感じがしてしょうがないの」




 なにも言えない。


 だって、その通りだから。




「……あのね恭子ちゃん。あたしは、恭子ちゃんに幸せになって欲しいの」

「……え?」




 思わず美波先輩に視線を向けると、とても優しげな瞳を見つけて、目が逸らせなくなった。


 そんな中で、あたしは改めて美波先輩が綺麗なことを知る。




「だから逃げないで、もっと攻めるってことも覚えて欲しいの。……恭子ちゃんってば、守りに入りすぎてるんだもん」




 いつか、佐久間先生に指摘された“守り癖”。


 それに気づいていたのは、佐久間先生だけじゃなかったと分かった。


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