危険ナ香リ


 途端に嬉しくなった。


 美波先輩も、あたしを見てくれているんじゃないかって、期待して嬉しくなった。




「本当に幸せになるにはさ、守るだけじゃだめなのよ。きっと」

「……はい」

「ほら、恋愛だって受け身だけじゃうまくはいかないじゃない?攻めていかなきゃ、男は落とせないのよ」

「はい」

「だから、勇気出して祐のこと、自力で解決しなさい?誰も助けてなんかくれないんだからね」




 1つ1つの言葉が身に染みていくのが分かった。


 不思議な感覚だった。


 美波先輩の言葉を聞いて、今すぐにでも祐のところに行こうと思える。


 ……不思議な効力。


 でも、嫌だとは思わないの。


 まるで佐久間先生みたいだなと思った。




「……柚乃のことも」

「え?」

「あたしはもう助けないわよ。柚乃も、恭子ちゃんも。……2人で解決しなさい」




 優しくて、それでも少し残酷だと思う。


 でも、嫌ではない。


 ただ少し、不安になる。


 山の中に1人残されて、そこから麓まで降りてこいって言われてるみたいな感覚が少しだけする。




「言っておくけど、敦にも頼っちゃだめよ」

「どうして……」

「甘えちゃだめだから。人は極地に追い詰められることで強くなるのよ」




 極地……。


 ……山の中が極地ってことかな。


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