危険ナ香リ




 でも……。




 不思議なことに、いくら記憶をさかのぼっても、あたしは祐のどこが好きだったのか分からない。


 前にも言ったように、あたしは“その人のどこが好き”ってゆうのはなくて、“その人だから好き”という考えを持ってるからだと思う。


 ……でも、必ずどこかに好きな理由があるはずだ。


 だから、少し考えてみた。


 あたしが祐を好きな理由を、考えてみた。




 ……もしかしたら、祐の存在自体が好きだったのかもしれない。




 “祐”ってゆう存在が好きだったのかもしれない。




 そこまで考えてから、やっぱり祐と早く仲直りしなきゃ、と思った。


 祐はあたしにとって大切な存在だって、理解したから。


 好きな人とか、そんな関係を取り払っても……祐はあたしの大切な存在だ。


 いなくなる?

 そんなの考えられない。




 ……だって、あんなに長い間一緒にいた人は、祐の他にはいないじゃない。




 きっと、このまま祐と離れてしまえば、あたし、きっと後悔する。


 だから言わなきゃ。謝らなきゃ。






 昼休みも終わりに近づいて、美波先輩に教室まで送り届けてもらった後、あたしは祐の方を見て、覚悟を決めた。


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