危険ナ香リ
部屋に戻ると、柚乃ちゃんは居心地悪そうに正座していた。
そんな柚乃ちゃんに紅茶を差し出してから、向かい側に座る。
「ごめんね。今、お菓子切らしちゃっててないの」
「大丈夫大丈夫」
白い歯を見せて笑う柚乃ちゃんに、あたしも少しだけ微笑んでみせた。
あたしはもちろんだけど……柚乃ちゃんも、うまく笑えていないような気がする。
あたしが気づいてるぐらいだから、柚乃ちゃんなんか、あたしが笑えていないことにとっくに気づいてるに違いない。
でも、お互いにそれを言わなかった。
……言ってもどうにもならないから、言わなかった。
「……ごめんね」
カチャン、とカップをソーサーに置いた音と、柚乃ちゃんのそんな声を聞いて、顔をあげる。
柚乃ちゃんは目を伏せていた。
「……どうして、佐久間先生のこと、佐藤さん達に話したの?」
責める気はなかったんだけど、なぜだろう。
また、学校にいた時のように目に涙を溜めている柚乃ちゃんを見ると、少しだけ口調がキツくなった。
その口調は、あたしでも、柚乃ちゃんを責めているように聞こえた。
「えっと……」
「どうして?」
「……」
「……なんで佐藤さん達と一緒にいたの?」
質問を変えたのは、柚乃ちゃんが答えづらそうに視線を揺らしていたから。
自分でも驚くほどに、落ち着いていた。
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