危険ナ香リ

―――― チラついたのは、小さな２つの背中。






　……無性に泣きたくなった。


　助けを呼んでも、祐は来るはずがないんだ。


　そう思ってしまったから、泣きたくなった。




「……清瀬？」




　気づけばあたしは俯いていた。


　佐久間先生の手は、すっかり離れている。


　見上げると、佐久間先生が不思議そうにあたしを見ていた。




「……なんで、先生の家に行かなきゃならないんですか？」




　さっきより怖くなくなったのは、あの力強い手が離れたせい？

　それとも、見下ろす瞳の色がさっきとは違うせい？




　……なんにせよ、あたしに助けが来ないことは明白だった。



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