危険ナ香リ
「で、でも、今はあたし、ちゃんと恭子のこと好きだからっ」
とってつけたようにしか聞こえないその言葉に、なんの想いもわいてこなかった。
……クラクラしている。
めまいがしている感覚だった。
だけど実際にはめまいなんか起こしていなくて……これはただの、あたしの錯覚だと、すぐに理解できた。
「本当だよ。本当に……」
「いいよ」
笑ってみせた。
もちろん、笑えてはいない。
「もう喋らなくていいから」
―――― 自分が傷つきたくなくて、そんな言葉で壁を作った。
飛鳥くんの時と同じだと、チラリと思った。
それから、この部屋を去る柚乃ちゃんの背中を見て、あたしはそれ以上に悲しくなるだろうことを直感で感じた。
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