危険ナ香リ


 不意をつかれたせいなのか。


 柚乃ちゃんは、一気に顔を強ばらせた。


 その顔を見たあたしは、心の中で小さな罪悪感が生まれた。


 それは、地雷を踏んだような気分になったから。


 ……踏んでしまった地雷が、とても大きなものだって分かったから。




「……っ。そんなの、恭子には関係ないじゃん!!」




 叫ぶような柚乃ちゃんの声を聞いて、……とても怖い顔をするその顔を見て、思わずビクッと肩を震わせた。




「なんで今そんなこと聞くの!?あたしの話なんて、関係ないじゃん!!」

「ご、ごめ」

「恭子のバカ!!どうして……っ、なんで恭子がそんなこと聞くのさ!?」




 “恭子が”?


 それって、あたしが聞いたことに怒ってる、ってことなの……?


 だとしたって、どうしてあたしが聞いちゃいけないの?


 ……あたしだけに好きな人を話さない理由が、なにかあるんだとしたら……。




 “……恭子のこと、あんまり好きじゃなかったの”




 ……やっぱり、嫌われているとしか思えない……。


 目に涙をいっぱいに溜めている柚乃ちゃんの前で、あたしも涙を溜めた。


 ただ単純に、悲しいから。


 ……それは柚乃ちゃんも同じなんだろうか。


 そう考えてみたけれど、やっぱり、あたしには……






 “柚乃に嫌われてるって思うよりなら、よく考えて、柚乃の気持ちを当ててみなさい”






 不意に、頭の中で美波先輩の声が聞こえた。




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