危険ナ香リ

「……あたしは、柚乃ちゃんの気持ち、分かってるよ」

「え？」

「柚乃ちゃんが、あたしだけに好きな人を言えなかった理由」




　柚乃ちゃんが唇を噛む姿が見えた。


　声を出せない様子でいる柚乃ちゃんに向かって、そっと微笑んでみる。






「好きな人の好きな人だって思ってる人になんて、自分の気持ち、いえないよね」






　あたしだったら、美咲ちゃんに祐が好きだって言っちゃうようなことを、柚乃ちゃんだってできるわけがない。






「ごめんね」

「……なんで謝るの」

「だってあたし、無神経なこと言っちゃったから」

「無神経なこと、って……」

「“柚乃ちゃんは誰が好きなの”」

「ああ……」




　どんな気持ちであたしのその言葉を聞いていたんだろう。


　怒ってた？　悲しんでた？　苦しんでた？


　もしかして、今挙げた全部の気持ちを抱えていたのかな。


　なんにしても、あたしは柚乃ちゃんにひどいことを言ったんだ。


　……本当、あたしってばバカだ。




「ごめんね」




　こんなんだから、あたしは柚乃ちゃんに嫌われているんだ。


　……もう、柚乃ちゃんを友達だなんて呼べなくなっちゃったなぁ……。


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