危険ナ香リ


 でも、佐藤さんに問い詰められた時、距離があれば誤魔化せるし。


 それに、タバコのニオイは嫌いだし、近づかなくなれば、あのニオイを嗅がなくてすむし。




「でもね」




 笑ってみた。


 うまく笑えてるか、わからないけれど。






「佐久間先生を無くす代わりに、また、友達でいてくれないかな。柚乃ちゃん」






 ……最低な取引だと思った。


 柚乃ちゃんはあたしのことを好きだって思ってないのに、友達でいるなんて。


 柚乃ちゃんがどれだけ不快な思いをするか、分かってるのに。


 ……友達でいたい。


 柚乃ちゃんと友達でいたい。


 “1人になるのが怖いから”なんて理由もあるけれど、でも、




―――― あたしは柚乃ちゃんが大好きだから、なんて理由の方が、大きいから。




 柚乃ちゃんは目を見開いた後、すぐに小さく笑う。


 ……悲しげな顔をしながら。




「なぁに言ってんの」

「……え」

「鏡見て、自分の顔確認してみなよ」




 ……確認しなくったって、分かってる。






「今にも泣きそうな顔しながら、佐久間先生を無くしてもいいだなんて言わないでよ」






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