危険ナ香リ


 佐久間先生がどれだけ大きな存在か分かってるから、尚更泣きたくなっていた。


 無くすなんて嫌だった。


 ……とても、嫌。




「それにあたしは、友達やめるつもりなんかないんだけど?」

「え?」




 ニッと笑いながら白い歯を見せた柚乃ちゃんの顔は、まだどこか悲しそうだった。




「で、でも柚乃ちゃん、あたしのこと嫌いなんじゃ」

「“嫌い”だなんて言葉一回も使ってないよ。それにね、さっきも言ったでしょ?」

「……え」

「今は、恭子のこと好きなんだよ」




 ……嘘。


 信じられなくて視線を泳がせると、柚乃ちゃんがあたしに手をのばしてきた。




「ごめんね。あたし、恭子に悪いことばっかりしてたのに……」




 身を乗り出してのばしたその手があたしの頭の上に乗っかった。


 ぐしゃぐしゃとかき混ぜるように髪を撫でられてから、視線を柚乃ちゃんの顔に集める。




「友達でいたいのはあたしの方なんだ。……恭子があたしのこと嫌いになってても、あたしは、恭子と友達でいたいの」




 いっそう悲しげに色づく顔を見て、あたしは息をつまらせた。


 ……とても、嬉しかったから。




「い、いいの?友達でいていいの?」

「ってか、恭子があたしのこと嫌いじゃないなら……」

「大好きだよっ」




 とっさに口から飛び出したその言葉は、少し音量が大きくて。


 柚乃ちゃんは一瞬キョトンとしたあと、すぐに目に涙を浮かべながら笑った。




「やっぱ今の取り消しね」

「ええ!?」

「友達じゃなくて、親友がいいな」




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