危険ナ香リ
聞き慣れない単語が聞こえて、思わずキョトンとしてしまう。
しばらくその顔のままでいると、柚乃ちゃんは目尻に浮かんだ涙を指先で拭いながらあたしの頭をなで続けていた。
「え?親友?」
「嫌?」
「え?嫌じゃないけど……。本当にいいの?」
「嫌?」
「え、嫌じゃな」
「ならいいじゃん」
親友なんて……今までいなかったから。
ちょっと慣れないその言葉に今は戸惑いしか感じない。
「ゆ、柚乃ちゃんは、」
「うん?」
「あたしなんかが、親友でいいの?」
恐る恐るそう尋ねてみると、柚乃ちゃんの手が止まった。
そして、ドキドキしながら返事を待っているあたしを見てから、なにを思ったか、両手で両頬をつねってきた。
「いたたたたっ」
「あんまし自分を蔑む言い方しないでね」
「ふ、ふふぉひゃん……」
「あとね、あたしは恭子が親友でいてほしいの。……だって、初めてだったんだもん」
“なにが?”なんて聞こうとする直前に頬から手が離れた。
「あんなに怒鳴り合ったのも、あたしと友達になる代わりに誰かを無くしてもいいって言う人も。……初めてなの」
とても優しげな顔した柚乃ちゃんを見て、涙腺が緩む。
泣いちゃう、なんて思いながら我慢していると、柚乃ちゃんがちょっとだけ泣いた。
「大好きだよ、恭子」
もう、本当に嬉しすぎて、目からボロリと涙がこぼれ落ちた。
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