危険ナ香リ
「……まさか付き合ってるんデスカ?」
「い、いや。そうゆうわけじゃ……。ってゆうか、なんで敬語なの」
「グッバイ処女しちゃったんデスカ?」
「ち、違……。ってゆうか、あたしそこまではしてないよっ」
キスしただけだもん。
……いや、舐められたけど。
それは忘れてしまおう。うん。
「……恭子は、佐久間先生のことが好きなんデスカ?」
思わず“え゛”と声を出してしまった。
す、好きって、友達としての好きでもなければ教師としての好きでもないって意味だよね。
いや、教師としての好きってあたしにもなんなのかよく分かんないけど。
とりあえず、柚乃ちゃんが言ってるのは、恋愛感情からくる“好き”っていう意味で……。
……あたしが、佐久間先生を、好き?
「なっ、ないない!そんなわけないないない!」
「はい問題です。今何回“ない”って言ったでしょうか」
「え?な、何回だっけ」
さっきの言葉を思い出して、指を折って数えようとしたところまでいってから、ハッとした。
今はそんな問題よりも、もっと違うことを考えるべきなんじゃないのかな。
「……なぁんか、そんなに“ない”ばっかり言われると、逆にあやしいよね」
「え?な、なに言ってるの柚乃ちゃんっ。有り得ないよ、有り得ないって」
「でも、」
疑いを含んだ柚乃ちゃんの視線があたしに突き刺さってきていた。
その視線が、さらに深く突き刺さる。
「さっき、“佐久間先生を無くしてもいい”って言った恭子の顔……すごく悲しそうだったよ?」
言い訳ができない。
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