危険ナ香リ
「あああああ、あの」
「昨日からなんなんだよ、お前」
「は、はい?」
なんとなく言いたいことは理解できたけど、聞き返すことしかできなかった。
だって、怖いから。
「気にいらねぇことがあるなら言えよ」
い、言えよっていっても……。
……言いづらいよ。
だって、飛鳥くんがあたしと美咲ちゃんを重ねていたって知ったのは、あの時、……飛鳥くんが善意で知る限りのすべてを話してくれた時だったから。
善かれと思って話したことが原因だなんて知ったら、飛鳥くんは、きっとすべてを話してくれたことを後悔するに違いないから。
……言えない。
だって、後悔がどれほど辛いものか知っているから。
言えないの。
優しい飛鳥くんには後悔をさせたくはないから。
あたしなりの、誕生日プレゼントのお返し。
……なんてのは建て前で、結局、言えないのはあたしに話す勇気がないだけ。
「え、えと、気にいらないことなんて……」
「目ぇ逸らしながら言うなよ。本当に気にいらねぇことがないなら、目ぇ見て言え」
ただでさえ頭鷲掴み状態で、しかもいつもよりちょっと顔近い状態なのに、目を見ろだなんて、ヒドい。
誰かの目を見ながら話すって、けっこう恥ずかしいことだって、飛鳥くん分かってるのかなぁ……。
「いい加減、手ぇ離せ!このバカヤロウが!」
困っていると、そんな罵声と共に飛鳥くんに鉄拳が降りかかった。
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