危険ナ香リ


 ……いや、あの、なんで自慢してるんですか。


 ってゆうか、自慢の使い方間違ってるよ。


 他にもツッコミを入れたいところが山ほどあるけれど、とりあえず、あたしに動く勇気はない。




 ……しかし、どこかの誰かさんは、この状況の中で笑うことができる勇気があるらしい。




「あっはっはっは!ちょ、恭子聞いた?今の。祐ってば面白いね。てゆうか、バカ?」




 ……柚乃ちゃん。


 お願いだからあたしの名前出さないでください……。




「おいコラ柚乃!笑うんじゃない!そして俺はバカじゃない!」

「母性本能なんて言ってる時点であんたはバカ決定だよ」

「俺より点数悪い奴にバカなんて言われたかねぇ!」

「残念でしたっ。期末テストはあたしの方が点数上だもーん」

「中間は俺が勝ってたもんね。しかも10点差つけてっ」




 だんだん論点がズレていっているのは気のせいじゃないと思う。


 チラリと佐藤さん達を見ると、もう何が何やらと言いたげな顔をしていた。


 ……その気持ち、分かります。




「たまたまのくせに、生意気な!」

「たまたまじゃねぇ!実力だ!」

「……話を戻せ」




 睨み合う柚乃ちゃんと祐に向かって、勇気あるその一言を発したのは、他でもない飛鳥くんだった。


 飛鳥くんは2人を睨みつけるんでもなく、呆れているんでもなく、ただ、“ああバカだなコイツラ”なんてことを表情で語っていた。


 その思いは、人の気持ちを理解することに欠けているあたしにも、よく分かるような表情だった。


 ……あたしにも分かるぐらいだから、当然のように柚乃ちゃんも祐も飛鳥くんがなにを考えているか、分かるわけで。




「……なぜだろう。実際に頭いい奴にバカにされると、殺意がわく」

「あたしも同じく」




 ……ち、血は見たくありません……。


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