危険ナ香リ


 どうして、佐藤さんはそんな怖い顔をしてあたしを見るんだろう。


 指をさされたあたしは、ただ、怖くて固まっていた。




「好きだよ。あたしは、恭子のこと大好き」




 そう言ってくれた柚乃ちゃんの表情をうかがう。


 柚乃ちゃんは少し笑顔を見せながら佐藤さんにそう言っていた。


 ……とても嬉しいと思った。


 大好きな柚乃ちゃんに、こんなに堂々と大好きだって言ってもらえることが嬉しい。




「祐は?」




 小さな笑顔はそのままに、柚乃ちゃんが優しげな口調で聞いた。


 祐はそんな柚乃ちゃんを見てから、あたしを見て、笑いかけてきた。






「好きだよ。もちろん、友達としてな」






 ……あたし、祐に嫌われてないの?


 だってあたし、祐にひどいこと言ったのに。


 それでも“好き”だって、“友達”だって言ってくれるの?


 信じられなくて、でも嬉しくて、戸惑いを隠せなくて。


 どうしていいか分からなくて、あたしはただただ祐を見つめた。




「……っ、バッカみたい。あんな奴好きだなんて、趣味悪い」




 佐藤さんの悪口が今は全然気にならない。


 でも、あたしの他に、その悪口を気にした人がいたようだ。




「てめぇに趣味の良し悪しなんか言われたかねぇよ」




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