危険ナ香リ


 え、と口をあけて驚いたのはあたしだけじゃなく、佐藤さんも驚いたらしい。


 あたし達は2人で声を出した張本人の飛鳥くんを見ていた。


 見られている飛鳥くんは、佐藤さんにひどく冷たい視線を突き刺していた。




「誰が誰を好きかなんて、そいつの勝手だろ。なんで他人のてめぇが割り込んでくんだよ」

「わ、割り込んでなんか」




 冷たい視線を突き刺された佐藤さんは、顔を青くしながら応戦していた。


 そんな時。




「おはようみんな。今日もいい天気でなによ」

「だいたい、あんたのその格好なんなんだよ。もうちょっとなんとかしろよ。そうだ、せめて髪をもっと整えてこいや」

「な、なんだと安藤飛鳥!?」




 偶然入ってきた担任の先生が、自分の頭を手で覆い隠しながら、飛鳥くんに怒った。


 ……たぶん、先生は飛鳥くんが自分に言ってるんだって勘違いしてるんだろうなぁ。


 だって言っちゃ悪いけど、先生の頭は例えるならフランシスコ・ザビエルのようだから。




「カッパとかいうなよ!」

「言ってねぇよ!つーか話に入ってくんなカッパ!」

「カッ……!?貴様その口縫い付けてやる!」




 ……もうさっきのようなシリアスな空気に持っていくのは無理な気がした。


 そう思うあたしをよそに、飛鳥くんと先生のやり取りを見てみんな大笑いをしていた。


 ちらりと佐藤さんを見ると、佐藤さんもあたしを見ていたようで、しっかり目が合った。


.
< 293 / 400 >

この作品をシェア

pagetop