危険ナ香リ


 すると、キッ、と睨まれてしまい、あたしは怯えて肩を縮めた。


 ……どうして佐藤さんはそんな怖い顔をしてあたしを見るんだろう。


 佐藤さんが言うようにあたしは地味で、目立つような人じゃないのに。


 それに、佐藤さんとの関わりもないに等しい状態なのに。




 それなのに、どうして佐藤さんはあたしにそんな怖い顔を見せてくるんだろう。




 笑い声がおさまってからも、ずっと、ちらちらと佐藤さんを見てはそんなことを考えた。


 でも、答えなんかでてこなくて……。


 HRが終わった時には、あたしは困った顔をして頭を抱えていた。




「あんまり気にすんなよ」




 上から声が落ちてきて、顔をあげた。


 見ると、飛鳥くんがそう言ってあたしに視線を向けていた。


 ……飛鳥くんは、どうしていつも真っ直ぐ見つめてくるんだろう。




「……飛鳥くん、あたしのこと怒ってたんじゃないの……?」




 頭を鷲掴みにしてきた飛鳥くんを思いだした。


 それから、あたし昨日飛鳥くんに向かって言った言葉を、あたしが壁を作るために言った言葉を思いだした。


 飛鳥くんは、あたしのこと怒ってたんじゃないの?


 なのにどうして、佐藤さんに向かって怒っていたの?


 飛鳥くんは少し黙ってから、ゆっくり口を開いた。




「確かに、言いたいこと言わねぇでいる清瀬に腹立ってたのは事実だけど、でも、」




 今までしっかりあたしと向き合っていた視線が、逸らされた。




「あんな奴に、清瀬がバカにされることの方が腹立つんだよ」




 その声はとても小さくて、語尾なんて今にも消えそうだった。


 そして飛鳥くんは手の甲で口元を隠してはいたけれど、頬がほんのり赤くなっていることはバレバレだった。


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