危険ナ香リ
……もしかして、照れてるのかな?
思わずジッと見つめてしまうと、飛鳥くんはあたしの視線に気づいたかのようにうつむいた。
元々長めな髪のせいで、顔が少し隠れた。
それを見て、本当に照れてるんだ、なんて思いながら驚いた。
そしてそれから、ふと、嫌な考えが浮かんでしまった。
「それってもしかして、美咲ちゃんをバカにされてるような感覚だったりする?」
飛鳥くんはあたしを妹の美咲ちゃんに重ねて見ているから……だから、バカにされて嫌だったのかな、なんて考えた。
もしここで、そうだ、と言われたらどうしよう。
不安になるけれど、答えを知りたいと思った。
飛鳥くんは顔をあげて、また真っ直ぐにあたしを見てくる。
その視線に堪えられなくなって、今度はあたしから目を逸らした。
「へ、変なこと聞いて、ごめんなさい。でも、そうなのかなって思って……つい」
言い訳をするように、早口で、しかもぼそぼそと声を出す。
こんなあたしを見ている飛鳥くんはどんな顔をしているんだろうか。
顔をあげて、飛鳥くんと目が合うことが怖いあたしは、うつむいたままでいた。
「……そんなに嫌だったか?」
「え?」
「俺が、清瀬と美咲を重ねて見てたこと」
休み時間特有のざわざわとざわめく空気の中で、その音に紛れるようにな声で、返事をする。
「誰かに、あたしを見てもらえていないってことが、嫌なの」
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