危険ナ香リ


 期待してしまっているあたしに、飛鳥くんは気づいているんだろうか。


 気づいていないんなら、今すぐに今の言葉を撤回した方がいい。


 だって、あたしきっと、飛鳥くんが離れていくことを許さないようになっちゃうから。


 ……きっとずっとそう思っているから。




「でも、」

「ダメならもう話さないから」

「え……っ」




 それは嫌だ、と反射的にそう思った。


 我が儘だって思われるかもしれない。


 飛鳥くんの言うことを信じないくせに、側にいてくれないっていうのは嫌だ。


 ……飛鳥くんを傷つけるのは分かってる。


 でも、




「や、やだ……っ」




 やっぱり、それは嫌なんだ。


 離れていかないでほしい。


 あたしから離れようとしないでほしい。


 ……ずっとずっと、そう思ってた。


 友達が離れていく度に“離れないで”って言いたかった。


 だけどそんな我が儘言ったら、うざがられちゃうと思って、我慢してた。


 ……でも今は我慢ができない。


 思わず泣きそうになったあたしをいまだに真っ直ぐ見つめている飛鳥くんが、小さな笑みを浮かべた。




「じゃあ一緒にいていいか?」

「……飛鳥くんは、あたしと一緒にいていいの?」




 逆に質問で返してみると、飛鳥くんは予想してたみたいで、さらに笑った。




「いいからこうして“一緒にいていいか”って聞いてんだよ」




 ああ、それもそうか。


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