危険ナ香リ





「……犯行の予告メールですか?」




 拉致って……拉致って書いてある。




「いや、違う。……って言い切ってもいいのか分からん」

「じゃあ、脅しのメールですか?だって、先生の秘密を校内放送で、」

「皆まで言うな」

「むぐっ」




 再び口を手でふさがれたあたしだけど、そんなに抵抗はしなかった。


 固まったわけじゃなければ、身の危険を感じたわけじゃない。


 ……ただ、メールの内容にビックリして、どんな反応をしていいか分からないから、とりあえず大人しくしてみているだけだ。




「……清瀬、頼む。俺のためだと思ってくれ」




 ……先生のために、犠牲になれ、と?


 “拉致”とゆう言葉が頭の中を飛び回り続ける中、佐久間先生は真剣な顔をしてあたしを見つめてきていた。


 その顔を見ていると、なんだかひどく可哀想に思えてきて……。




 ……もし何かあったら、警察に電話すればいいや。


 そう思ってしまった。



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