危険ナ香リ
な、なななっ、ち、近いんですけど!!
わざわざ耳元までやってきて楽しそうな声で囁いてきた佐久間先生から、慌てて離れた。
ものすっごく楽しそうな佐久間先生は、また口元に手をおいて笑い声を出さないように堪えている。
な、なんで笑っていられるの!?
あたしはもう緊張しまくってどうしていいか分かんないのに!
なんかムカつく!
「さ、佐久間先生のバカ!不良!」
「叫ぶなよ。目の前に職員室があるんだぞ」
「……っ、ロリコン」
「いや、だからって声小さくしてまで悪口言うか?」
「女たらしっ」
「違うって何回言えば分かるんだよ」
なんか、いちいち余裕な佐久間先生が気に入らない。
……なんでこんな、あたしばっかり余裕ないのかな。
やっぱり、佐久間先生は“慣れている”所為で余裕があるのかな。
なんて考えてたら、なんか分かんないけど悲しくなってきた。
「……あたし、職員室に用事あるんで、失礼します」
悲しいのは嫌だから、もう逃げちゃおうと思った。
ぺこりと頭を下げてから、佐久間先生を一度も見ずにドアをノックしにいった。
佐久間先生の様子を気配で探っていると、ドアを開けた所で佐久間先生が動いた。
「……保健室に戻らないんですか?」
「俺も職員室に用があるんだよ」
半開きのドアを開けようと、ドアに手をおいて押してきた佐久間先生。
そうしてると、タバコのニオイを微かに感じて、ドキッとした。
「失礼します」
「あ、佐久間先生。と、清瀬。お前今そこで何叫んでたんだ?」
「え゛。あ、あの、なんでもないです……」
担任の先生に不思議そうな顔をされながら、そそくさと中に入った。
佐久間先生から香るタバコのニオイを妙に意識しすぎて、体が動かなくなりそうだった。
……ううん。
ニオイもそうだけど、佐久間先生自体を意識しすぎていたんだ。
あたし、変なの。
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