危険ナ香リ




 素直に従っちゃうあたしって、どうなんだろう。




 プリントの束達を両手に抱えながら、小さくため息をはいて佐久間先生を保健室で待つ。


 ……なんだか、あたし、少し緊張してる。


 まあ、そりゃ、2人っきりになるわけだから、緊張しないって言う方がおかしいけどっ。


 ……やばい。


 “2人っきり”なんてこと考えちゃったら、もうなんだか落ち着いてられない。


 だ、だって2人っきりって、そんな。


 って、今までだって2人っきりになったことぐらいあるのに。


 あたしってば、変なの。




「清」

「うぎゃあああっ!」




 いきなりガラッとドアが開いて白衣を身に纏う佐久間先生の姿が見えて、ビックリして思いっきり叫んだ。


 だ、だって、心の準備とかがまだできてないのに……!




「……幽霊を見たような悲鳴をあげるな。ちょっとビビっただろ」

「だ、だだだ、だって」




 少しだけ眉を寄せている佐久間先生は、顔を赤らめて慌てているあたしを見て、眉を定位置に戻した。


 それから、なぜだか分からないけれど、ジッとあたしを見つめてくる。


 ……うっ。


 あたしはなんだか堪えられなくなってしまい、素早くうつむいた。




 数秒後。


 ……ガチャン、と鍵がかかった音が聞こえた。




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