危険ナ香リ
「どうした?」
どうして固まっているのか分かっているくせに!
意地悪な人だ。
なんて、怒る余裕すらないあたしだった。
「もしかして、期待してる?」
……っ!!
きた、期待って!
そんなの全然してないんだから!
……た、ただ、身の危険を感じてただけだもん。
「清瀬」
「……っ、そ、そんなの、してなっ、してないですから!」
「ふぅん。してたんだ」
「だ、だからしてないんだってばー!」
なんて叫ぶと、佐久間先生は小さく笑い声を漏らした。
それから顎にあった指を頬まで移動させる。
肌を撫でる指先の感触にドキッとして、肩を震わせた。
その振動のせいで、抱えていたプリントの束が一束落ちてしまった。
そのプリントに気をとられている隙に、肩においてあった手が動いて腰に回る。
「きゃ……!?」
ぐっと引き寄せられて、そのことを予想もしていなかったあたしは、悲鳴をあげて、一瞬腕に力を緩ませた。
そのおかげで、全部のプリントの束が床やソファーの上やあたしの足の上に落ちてきた。
足の上にあったその束が、パサッと音をたてた。
……そんな音、聞こえないぐらいにドキドキしてる。
「可愛すぎるんだよ、お前」
そんなことを、耳元で囁かれていたから。
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