危険ナ香リ




「……清瀬」




 ぐいっと引き離されて、真っ赤な顔を露わにさせられた。


 その顔をのぞき込まれた時には、もう逃げ出したいぐらいに恥ずかしいと思った。


 自分の手で顔を隠すと、佐久間先生はそれさえも退かしてくる。


 どうしようもなくて最後の手段としてうつむいた。


 そうしたら、佐久間先生が小さく笑った声が聞こえた。




「恥ずかしい?」

「……っ」

「照れてる?」

「……っ」

「怒鳴らないのか?」

「……っ、か、帰」

「清瀬」




 ぐいっ、と顎を掴まれて、上を向かされる。


 あまりの力強さに驚いて短い悲鳴をあげた。




「……キスしたい」




 間近にあるその顔に、そんな言葉に、ドキッとして体が動かなくなった。


 佐久間先生の表情も分からないほど近くに顔があって、どんどん近づくそれに、恥ずかしさに堪えきれずに目をギュッとつぶった。


 気配でわかる。


 もうすぐ、触れてしまうことが。






―――― ドンドンッ






 突然激しいノックの音が聞こえて、ビックリしたあたしは肩を跳ね上がらせた。




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