危険ナ香リ
そのついでに目を開けると、佐久間先生も驚いたようにドアの方を振り向いていた。
じゅ、寿命が縮んだ……。
なんて思っていると、まだ叩かれ続けているドアを見ている佐久間先生が小さく舌打ちをした。
「いいとこだったのに」
そ、そうゆうことは聞こえないように言って欲しいなあ。
火照る顔を幾分か冷たい手で押さえながら、佐久間先生を見つめた。
……そういえば。
前にキスした時は気にすることはなかったけど……。
佐久間先生、あたしに“生徒にキスなんかしない”って言ってたことがあったよね。
「居留守使うか」
「え!?」
「静かにしてろよ」
「待っ!ちょ、せんせっ」
「なんだよ」
不機嫌そうに返事をした佐久間先生は、もうすでに顔を近づけてきていた。
慌てて押し返したはいいものの……あの、ちょっと離れて欲しいんですが……。
って、今はそんな贅沢なこと言ってる場合じゃない気がする。
止むことのないノックの音に、焦らされるあたしは急いで口を開く。
「きゅ、急患かもしれませんよっ」
「……」
「急患に決まってますよっ」
「……ん」
「……あの」
「ん?」
「なんで、キス、するんですか?」
顎を掴んでいる手がピクリと動いたのを肌で感じた。
いきなりすぎたかも、なんて思い、少し後悔した時。
「―――― 恭子っ!」
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