危険ナ香リ









「や、やっぱり帰」

「俺を自殺に追い込む気か」

「だ、だって先生!あたし美波先輩と交流なんかないし!先生の秘密なんか本音を言っちゃえば聞いてみたいし……」

「その秘密、誰かの耳に入ったら俺は即屋上から飛び降りてやるぞ」




 佐久間先生に腕を引っ張られ、タバコくさい車から降ろされる。


 タバコのニオイから離れられたのはいいけれど……。


 いざマンションの前まで来ると、後悔と不安とか入り混じり、なんだか腰が引けた。



 なのに佐久間先生ってば、もう連れて行く気満々な様子で、嫌がるあたしをズルズル引きずって一歩一歩進んでいく。




「あ、あたし、夕飯の支度が」

「“行きます”って言ったのはどこのどいつだったっけな?一度引き受けたら最後までやれよ」




 ……本当にその通りだ。


 あたしが首を縦に振っておいて、今さら、やっぱりヤダ、だなんて無責任だよね。


 しゅんと沈み込むと同時に、小さな決意を決め、トボトボと佐久間先生の後ろをついて行く。


 急に大人しくなったあたしが不思議なのか、佐久間先生が時たま振り向いてあたしの様子を確認してくる。


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