危険ナ香リ
聞き慣れたその声がドアの向こうから聞こえて、思わず驚いて“え?”と声をあげた。
……なんで?
「……は?」
佐久間先生もそんな声を出して、ドアの方へ顔を向けた。
「きょーこー!」
ほ、本当になんで?
なんで、ここにあたしがいるって分かってるの?
疑問でいっぱいのあたしは、ただただドアの方を見つめていた。
……なんでだろう。
声から、必死な様子が伝わってくるみたいだ。
疑問でいっぱいなあたしだけど、そんな声の様子に気づいて、ちょっとだけ嬉しいななんて思った。
いや、そんなこと思ってる場合なんかじゃないんだけどね。
「……清瀬」
「え?あ、は、はい」
いつの間にかあたしの方へ向き直っていた佐久間先生に名前を呼ばれて、慌てて顔を向けた。
「―――― んっ!」
ビクリ、と肩を跳ね上がらせたあたしから早々に離れた佐久間先生の表情は、分からなかった。
見えなかった。
あたしは、ドアに向かって歩いていく佐久間先生の背中を、顔を赤くしながら見つめた。
―――― 触れ合った唇に指先を触れさせた時、鍵が開く音が聞こえた。
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