危険ナ香リ




「恭」

「待て」




 鍵が開いた瞬間に勢いよく開いたドアから現れたその人の腕を、佐久間先生は簡単に捕まえた。


 あたしはと言えば、その人の姿を見た途端、イケないことをした気分になって、目を逸らした。


 口元を隠して、顔を赤く染めたあたしは、端から見たらどんな風に見えるんだろう。




「なんだよ?」

「保健室に何か用事か?……古川」




 祐の声がイラだっているように感じたのは、気のせいだろうか。


 表情を見てそれが気のせいかどうかを確認しようとは思わないあたしは、ただただ、その場で小さくなっていた。


 ……にしても。


 本当に、なんで祐が保健室にきたんだろう。


 さっき見たからには健康そうだったし、あたしを探していたんだとしても、なんで保健室にいるって分かったんだろう。


 ……確信してなきゃ、あんなに激しくドアを叩かないよね。




「用事、っつーか、恭子を助けにきたんだよ」

「“助けに”って、どうゆうことだ」

「話せば長くなるかもしれないから言わねぇ」

「言え」

「うるせぇ変態」

「黙れ餓鬼」




 ……なんでケンカになってるんだろう。




「餓鬼とはなんだコラ!俺はもう17だ!どうだ参ったかコノヤロウ!」

「十分餓鬼だバカ。ってゆうか、そんなので参るようなアホがいるか。バカ」

「バカって言う方がバカなんだよ!バカ!」

「お前だってバカって言ってるじゃないか。本当にバカだな」




 ……ぷ、プリント拾わなきゃ。


 ケンカしている2人の声を聞きながら、落ちているプリントが目に入ったので、とりあえずプリントを拾うことにしたあたしだった。


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