危険ナ香リ




「そっからなんとなく気になって見てたら、職員室から出てきた恭子が階段降りていくし……」




 教室に戻るには、職員室の隣にある階段を降りるんじゃなく、職員室と同じ階にある渡り廊下を歩いた方が断然近い。


 見てる側としたら、不自然だったに違いない。




「それに、美咲も」

「安藤?なんでそこで安藤が出てくるんだ?」

「……早退するって、メールがきたから、なんか心配になって電話したら“そういえば、清瀬先輩なんか変だったなあ”って言ってて……」




 小首を傾げていた美咲ちゃんの姿を思い出し、“しまった”と思う。


 もし、職員室で佐久間先生に保健室にいろと言われた時に、自然な態度をとってたら……。


 ……って、そういえば。




「待て。そうだとしても、なんであんな慌ててここまで来た?しかも“助けに”って……」

「……だって」

「ただ単に雑用を頼まれて嫌がって変な顔してただけかも、とか思わなかったのか?」




 佐久間先生と同じようなことを考えていたあたしは、チラリと祐を見る。


 祐は苦い顔をしながら、あたしをチラリと見てきた。


 そして視線が合った途端、あたしはすぐにまたうつむいた。


 ……なんだか、祐の顔がちゃんと見れない。


 なんでだろう、なんて考えなくてもすぐに気づいた。




―――― “先生”とキスしたことで、罪悪感のようなものができているからかもしれない。




 そこまで考えると、祐の声が聞こえた。






「朝、佐藤達が“恭子と佐久間がデキてる”とかなんとか言ってたの、聞いてたから……」






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