危険ナ香リ
でもよく考えると、それは生徒として特別だって意味で。
……あたしは、それをなんだと思っていたんだろうか。
都合よく“特別”だなんて言葉だけを抜き出して、なにを期待していたんだろうか。
あたしはおかしい。
勝手に心のどこかで“なにか”を期待して、“ただの生徒”なんて言葉に勝手に悲しくなってる。
「好き、とか思ったことねぇの?」
「今さっき似たような質問してたのにまた聞くのか。しつこいな、お前」
「う゛」
はあ、と短いため息をはいた佐久間先生は、あたしを見ようともしない。
「……好きだとも嫌いだとも思ったことはない」
嫌いだって言われるよりはマシだ。
全然マシだ。
マシなんだ。
……マシに決まってるんだ。
ひたすら“マシだ”と心の中で叫んでいた。
そして、ぎゅっとスカートを握りしめ、唇を噛みしめた。
―――― 生徒としてでもいいから、一言、“好き”だと言って欲しかった。
言い聞かせるような言葉達の中で、その本音は真っ直ぐにあたしの胸を貫いた。
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