危険ナ香リ




「じゃあ、恭子はあんたにとっては本当にただの生徒なんだな」

「ああ」

「嘘ついたら針千本飲ますからな」

「飲まそうとしたら警察呼ぶからな」




 胸が苦しい。


 どうしようもなく苦しい。




「警察呼ぶ前に飲ませてやる。っつーか、恭子、そろそろ教室に戻るぞ」




 ……“特別”って言ったじゃない。


 キスしたじゃない。


 キスマークつけたじゃない。


 抱きしめてくれたじゃない。


 舐めてきたじゃない。




―――― 佐久間先生は、好きでもない相手にそんなことができる人なの?




「恭子?」




 “馴れている”から、好きでもない相手とキスできるの?


 あたしは、出来ないよ。






 ……そこまで思って、やっと気づいた。







「……っ」






 あたしが、“なんの”期待をしていたのか、気づいた。






 気づいたあたしは、もうどうすることもできなくて、涙を零した。


 もうどうにもならないんだと、気づいたからこそ、泣いた。


 ……そして後悔した。






―――― “また”気づくのが遅かった……。






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