危険ナ香リ
もっと早く気づいていたなら、あたしはキスを拒むことができたのに。
そして、こんなツラい想いをしなくてすんでいただろうに。
……祐を好きだった時にも後悔をしたのに、あたしは“また”後悔している。
学習能力がないんだと嘆いても、もうどうしようもない。
「きょ、恭子っ」
祐に名前を呼ばれたその時には、もう保健室から飛び出していた。
教室とは別校舎だからとゆう理由もあってか。
廊下には、誰もいなかった。
……息苦しい。
それは走っているからなのか。
それとも泣いているからなのか。
……もしくは、さっきから胸が苦しいせいなのか。
「―――― 恭子!」
ぐいっと腕を掴んできたのは、祐だった。
振り向かされて祐の顔を見て……ひどくショックだった。
だから、祐の体を思いっきり押した。
「恭子!」
「……っ、やだやだっ!」
「恭子っ」
「離してっ!」
ここがどこなのかすら分からないあたしは、ただ焦って祐の体を押した。
なんで焦っているのか分からない。
だけど焦っていた。
「恭子!」
祐がそう叫んだ声が聞こえた時――――
「―――― に゛ゃ」
むぎゅっ、と両頬を引っ張られた。
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