危険ナ香リ




「落ち着け、おい!そんなに走ると明日筋肉痛になるぞ!」

「ははひへっ」

「お前筋肉痛嫌だろ!?いつだったか筋肉痛がヒドくて“もう歩けない”って泣いたことがあるだろ!?」

「ひーひゃーいーっ」

「ほらみろ!もう筋肉痛が」

「に゛ゃー!!」

「……あ。まさか俺のせい?」

「うーっ!」

「ご、ごめんっ」




 パッと手が離れた瞬間に、引っ張られていた頬をさすった。


 痛かった。痛かったよ。


 目でそう訴えてやると、祐は本当に申し訳なさそうな顔をする。




「……祐のバカ」




 祐なんか嫌いだ。


 だって祐、ほっぺ引っ張ってきたし……。


 ……佐久間先生にいっぱい色んな質問してたし。


 その質問の答えで、どれだけあたしが傷ついたと思ってるの。


 そう言いたい思いを抑えて、そんな言葉を放った。




「……屋上にいこうか。そこなら誰もいないからさ」

「鍵かかってるよ」

「……じゃあ、屋上のドアの前。そこも誰もこないからさ」




 一緒にいたいとは思えなかった。


 祐と一緒にいるぐらいなら、1人になりたかった。


 ……祐を恨むのは筋違いだと思われるかもしれないけれど、佐久間先生だけを恨んでも仕方がない。




「……1人がいい」

「だめ。ちょっとでいいから、俺と話するぞ」

「……」

「ちょっとだけだから」




 頼み込んでくる祐。


 その姿を見て、それから“ちょっとだけ”とゆう言葉を聞いて……仕方なく頷いた。


 祐は、控えめに笑っていた。


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