危険ナ香リ




「……分かったわ」




 そう言ったお姉ちゃんと共に、ここから出て行く足音が聞こえる。


 バタン、とドアが閉まった音が聞こえた後、布団から出ることなく、そのまま目を閉じた。


 ……もう一度、眠ってしまいたいと思ったから。


 光の差し込まない布団の中で、息苦しさを感じながら、それでも眠ろうとした。




 そんな時、携帯電話が震える音がした。




 まるで“寝るな”と、そう叫んでいるような携帯電話を、しばらく無視し続けた。


 しかし、いつまでたっても音は止まず、遂には根負けしてしまったあたしは、ため息をはいて起き上がった。




 カバンの中から出した携帯電話には、“着信 美波先輩”と表示されていた。




 ……戸惑った。


 美波先輩から電話がくる理由は、佐久間先生絡みのことだと、すぐに分かったから。


 どうしよう。


 出たくない。そう思ったけれど、留守番電話に繋がったのにまた掛け直してくる美波先輩に……根負け、してしまった。


 そして、少し緊張しながら、通話ボタンを押した。




「……もしも」

『もしもし!?恭子ちゃん!?あー、よかった!繋がった!』




 大きな声を耳元で聞いたせいなのか、耳が痛んだ。




『大丈夫なの!?早退したって聞いたんだけど!』

「は、はい。大丈夫です……」

『そう?よかったーっ』

「心配かけて、ごめんなさい……」

『ううん。……ねぇ、恭子ちゃん』




 “きた”と、そう思ったあたしは、携帯電話を握る手に力をいれた。


.
< 330 / 400 >

この作品をシェア

pagetop