危険ナ香リ
「……分かったわ」
そう言ったお姉ちゃんと共に、ここから出て行く足音が聞こえる。
バタン、とドアが閉まった音が聞こえた後、布団から出ることなく、そのまま目を閉じた。
……もう一度、眠ってしまいたいと思ったから。
光の差し込まない布団の中で、息苦しさを感じながら、それでも眠ろうとした。
そんな時、携帯電話が震える音がした。
まるで“寝るな”と、そう叫んでいるような携帯電話を、しばらく無視し続けた。
しかし、いつまでたっても音は止まず、遂には根負けしてしまったあたしは、ため息をはいて起き上がった。
カバンの中から出した携帯電話には、“着信 美波先輩”と表示されていた。
……戸惑った。
美波先輩から電話がくる理由は、佐久間先生絡みのことだと、すぐに分かったから。
どうしよう。
出たくない。そう思ったけれど、留守番電話に繋がったのにまた掛け直してくる美波先輩に……根負け、してしまった。
そして、少し緊張しながら、通話ボタンを押した。
「……もしも」
『もしもし!?恭子ちゃん!?あー、よかった!繋がった!』
大きな声を耳元で聞いたせいなのか、耳が痛んだ。
『大丈夫なの!?早退したって聞いたんだけど!』
「は、はい。大丈夫です……」
『そう?よかったーっ』
「心配かけて、ごめんなさい……」
『ううん。……ねぇ、恭子ちゃん』
“きた”と、そう思ったあたしは、携帯電話を握る手に力をいれた。
.