危険ナ香リ
『柚乃と、仲直りできてよかったね』
……あれ……?
てっきり佐久間先生の話になると思っていたのに、……柚乃ちゃんとのこと?
あ、そういえば、美波先輩に柚乃ちゃんと仲直りしたこと言ってなかったなぁ。
多分、美波先輩は柚乃ちゃんから聞いたんだろうな。
なんて思いながらも“どうして佐久間先生の話にならないんだろう”と不思議に感じていた。
『本当に安心したわ。これで毎日2人とご飯食べれるわー』
「あ、え、えと、心配かけて、ごめんなさい……」
『謝らなくてもいいのいいの。……ってゆうか、淳のエロ野郎にキスマークつけられたって聞いたんだけど……本当なの?』
“淳”という単語に、不意打ちを食らったあたしは必要以上に肩を跳ね上がらせた。
……“キスマーク”という単語に、そのマークがつけられた部分に意識が向かった。
「……え、っと」
『本当なのね!?あんのくそ野郎……!後で帰ってきたらぶっ殺してやるわ!』
まだ帰ってきてないんだ……。
……じゃあ、もしかして美波先輩は今日あったことを佐久間先生から聞いてないんじゃないのだろうか。
だとしたら、だから今日あったことを言わないんだ。
なんとなく納得しながら、キスマークがついている部分に指をつけた。
……佐久間先生は、好きでもないのに、あたしにこんなものをつけたんだ……。
『……恭子ちゃん?』
「え?あ、はい」
『なんか元気ない?』
「……そんなことは……」
『でも、なんかいつもと違う気がする』
あたしは分かりやすいんだろうか。
それとも、美波先輩が鋭いんだろうか。
『どうしたの?』
そう聞いてきた美波先輩の声は、柔らかく、そして優しかった。
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