危険ナ香リ
だからなのか。
妙に説得力があって、何故か安心感があって。
……“諦める”とゆう選択肢しかなかったはずなのに、その言葉の所為で選択肢がもう1つ、増えた気がした。
「……あの」
でも、選択肢が増えたからといって、容易にそちらを選ぶことができない。
だって、あたしが“諦める”とゆう選択肢しか持っていなかったのは、佐久間先生の言葉の所為だけじゃなかったから。
“反対する。俺は、先生との恋なんて幸せになれないと思うから”
そう言った祐の声が、記憶の中から引っ張り出された。
そして、無意識に携帯電話を握る力が強くなる。
「今更なんですけど……。美波先輩は、反対とかしないんですか?」
周りから反対されるような恋はしたくないという理由が、あたしの中にあった。
なんでそんな理由があるのか、詳しくは分からない。
だけど、きっと……周りに反対されるなら、あたし自身が自信を持てなくなりそうだから。
元々無い自信を、さらに削がれてしまったら、きっと、あたしはその恋を自ら手放す。
そんな気がする。
『反対?』
「はい」
『なんで?』
「……え?」
“反対する”とか“反対しない”とか、答えは、そんな2択だけでしか考えていなかった。
だから、予想もしていなかった“なんで?”という言葉に、あたしはひどく戸惑った。
そんな戸惑いも手助けして、あたしは、なんと返せばいいのか分からず、ただぐるぐると忙しく頭を回転させていた。
『なんで恭子ちゃんの幸せを反対する必要があるの?』
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