危険ナ香リ


 だからなのか。


 妙に説得力があって、何故か安心感があって。


 ……“諦める”とゆう選択肢しかなかったはずなのに、その言葉の所為で選択肢がもう1つ、増えた気がした。




「……あの」




 でも、選択肢が増えたからといって、容易にそちらを選ぶことができない。


 だって、あたしが“諦める”とゆう選択肢しか持っていなかったのは、佐久間先生の言葉の所為だけじゃなかったから。




 “反対する。俺は、先生との恋なんて幸せになれないと思うから”




 そう言った祐の声が、記憶の中から引っ張り出された。


 そして、無意識に携帯電話を握る力が強くなる。




「今更なんですけど……。美波先輩は、反対とかしないんですか?」




 周りから反対されるような恋はしたくないという理由が、あたしの中にあった。


 なんでそんな理由があるのか、詳しくは分からない。


 だけど、きっと……周りに反対されるなら、あたし自身が自信を持てなくなりそうだから。


 元々無い自信を、さらに削がれてしまったら、きっと、あたしはその恋を自ら手放す。


 そんな気がする。




『反対?』

「はい」

『なんで?』

「……え?」




 “反対する”とか“反対しない”とか、答えは、そんな2択だけでしか考えていなかった。


 だから、予想もしていなかった“なんで?”という言葉に、あたしはひどく戸惑った。


 そんな戸惑いも手助けして、あたしは、なんと返せばいいのか分からず、ただぐるぐると忙しく頭を回転させていた。






『なんで恭子ちゃんの幸せを反対する必要があるの?』






.
< 337 / 400 >

この作品をシェア

pagetop