危険ナ香リ


 あたしの幸せ?

 ……幸せ?




「で、でも、美波先輩」

『ん?』

「“先生”に恋するなんて……幸せになんか、なれないんじゃないんですか?」




 だから祐は“反対する”と答えを出していた。


 ……美波先輩と祐の間にある矛盾に、あたしは戸惑いを隠しきれずにいた。




『ん?んー……。まあ、そうかもね』

「え?」

『“先生”との恋だなんて、幸せになれないかもね。バレたら大変だものね」




 やっぱり。


 そう思うと、隠しきれない程大きかった戸惑いが、幾分か小さくなった。


 とゆうよりも、戸惑いを覆い隠すように、ひどく落ち込んでしまった。


 ……幸せになれないんだ。


 ため息をはきたくなった時、携帯電話から、相変わらずの優しい声が聞こえてきた。




『でも、恋した相手が“先生”ってだけでしょう?』

「……え?」

『周りの目を気にしなきゃいけないってことは辛いだろうけど、恋することは幸せなことに代わりはないとあたしは思うわ』




 恋することは、幸せなんだろうか。


 ……あたしは、恋に辛い思いしかしていない。


 祐が初恋で、それに気づいた瞬間には、もう祐は美咲ちゃんと付き合っていた。


 “どうして気づかなかったんだ”って、後悔して、2人の姿を見て胸を痛めた。


 あたしの恋に対する思い出は、そんな苦いものしかない。


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