危険ナ香リ




「でも、恭子」




 “止めよう”と言ったすぐ後に、祐が急ぐように声を出した。


 あたしが、この話はもうしたくないって、今の言葉で分かったはずなのに。




「佐久間のこと、好きなんだろ?」




 祐の、確信したようなその声でそう言われてようやく、ドキッとした。


 自分で“好きだ”と気づいた時には感じなかった、ドキドキと心臓が激しく動く感覚を、今、ようやく感じた。




「あいつの前で笑わなくったって、好きなんだろ?」

「……」

「好きな奴のことを“どうでもいい”なんて、本当に思ってるのか?」




 説教のようで説教ではない。


 そう感じたのは、祐の声が穏やかだからなのか。




「……なあ、恭子」




 泣きそうになった。


 ようやく心臓がざわついて、本当にあたしは佐久間先生が好きなんだって思ったから。


 ……それと、今までの自分への後悔の気持ちから。






「―――― 俺は恭子が好きだったよ」






 ……え?




.
< 343 / 400 >

この作品をシェア

pagetop