危険ナ香リ
「でも、恭子」
“止めよう”と言ったすぐ後に、祐が急ぐように声を出した。
あたしが、この話はもうしたくないって、今の言葉で分かったはずなのに。
「佐久間のこと、好きなんだろ?」
祐の、確信したようなその声でそう言われてようやく、ドキッとした。
自分で“好きだ”と気づいた時には感じなかった、ドキドキと心臓が激しく動く感覚を、今、ようやく感じた。
「あいつの前で笑わなくったって、好きなんだろ?」
「……」
「好きな奴のことを“どうでもいい”なんて、本当に思ってるのか?」
説教のようで説教ではない。
そう感じたのは、祐の声が穏やかだからなのか。
「……なあ、恭子」
泣きそうになった。
ようやく心臓がざわついて、本当にあたしは佐久間先生が好きなんだって思ったから。
……それと、今までの自分への後悔の気持ちから。
「―――― 俺は恭子が好きだったよ」
……え?
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