危険ナ香リ


 ……会わなきゃいけない。


 そう思ってはいる。


 だけど、もし、またふられたら……なんて思うと、会う勇気がなくなる。


 どうしようもないなあ。




「……恭子」




 ハッとして柚乃ちゃんに視線を向けると、柚乃ちゃんは心配そうにあたしを見つめていた。


 飛鳥くんは、あたしがさっきまで見ていた保健室をジッと見つめていた。




「……うん。今年はちゃんと会いに行くから」




―――― 柚乃ちゃんと飛鳥くんは、あたしの気持ちを知っている。




 あの日。

 あたしが佐久間先生にふられた日。


 担任の先生に頼まれていたプリントを渡すことをすっかり忘れて、そのまま帰った後、佐久間先生がわざわざプリントをこの教室まで持ってきてくれたらしい。


 受け取ったのは柚乃ちゃんだった。


 プリントを渡す時、佐久間先生は、




“清瀬に、謝っておいてくれないか”




 そう言ったそうだ。


 不思議に思った柚乃ちゃんは、次の日、目を腫らして学校にやってきたあたしを問い詰めた。


 元々、柚乃ちゃんには話すつもりだったから、聞かれたことや、それ以外のことも、全部話した。


 ……あたしが、佐久間先生を好きだということを話した。


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