危険ナ香リ


 “謝っておいてくれないか”だなんて。


 謝りたいなら、自分で謝ればいいのに、柚乃ちゃんを使って謝るなんて。


 ……もう、あたしに会う気なんかないみたい。


 それに、そんなことを言っていたのなら……あたしはふられたんだと、確信せざるを得ないじゃない。




「……痛々しい」




 ポソリと柚乃ちゃんが呟いた言葉を聞いて、飛鳥くんが頷いた。


 今の言葉は、間違いなくあたしに向けられていた、よね?


 ……あたし、そんなに痛々しいですかね……。




「見てられない!……と言いたいところだけど、むやみに足突っ込んでも、めんどくさい方向にいくだけっぽいからなぁ。手の施しようがないよ」

「え?」

「でも見守ってるだけってのも歯痒いよね」

「え?」




 い、いや、あの、あたしは別に、柚乃ちゃん達に助けてほしいわけじゃないよ。


 でも、助けてくれるなら、お言葉に甘えちゃうかもしれない……。


 ……でも、きっと、これは誰かに助けを必要としてはいけないと思うんだ。


 これは、あたしが自分でなんとかしなければいけない問題なんだ。




「ごめんね。役に立たなくて」

「そ、そんなことないよ!」




 ってゆうか、役に立つとか立たないとか、そんなのあたしは気にしない。


 ただ、側にいてくれるだけで……そしてできるなら、あたしを好きでいてくれれば、それだけで幸せだから。


 そう伝えようとした時。




「えー!?それ本当!?」




 大きな声が聞こえた。


 顔を向けると、そこには久しぶりに会う、佐藤さんがいた。


.
< 350 / 400 >

この作品をシェア

pagetop