危険ナ香リ




「気に入られてんじゃん」

「違うの!」

「わけ分かんない」

「佐久間先生はあたしのこと、ただの生徒って言ってたの!」

「は?」

「佐久間先生はあたしのことなんか好きじゃないの!あたしのことをそうゆう風になんか見てくれてない!」




―――― “墓穴を掘る”とはまさにこのことではないだろうか。






「あんた……佐久間先生が好きなの?」






 佐藤さんの口角が、持ち上がったのを見た。


 ハッとして口の動きを止めるが、そんなことをしても、もう無駄だった。




「へぇー。そうなんだぁ」




 それはただの冷やかしではなくて、悪意の籠もった恐ろしい言葉。


 それまでのことはなんだったのかと不思議に思うくらいに、勢いが急下降していった。




「じゃあやっぱ佐久間先生と付き合ってるってのは自分で流したデマってわけ?」

「ち、違」

「懐中時計は、佐久間先生から貰ったんじゃなくて、実は自分で買ったものだったり?」

「違うよ」

「違わないでしょ?」




 口角がさらに上がる。


 弧を描くその赤い唇に、ゾッとした。






「よくよく考えればそうに違いないんだよね。だってカノジョがいる人が違う奴に……しかも生徒なんかに、プレゼントなんかするわけないもんね」






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